とある日常の記憶

私の恋人は彼女。ふだん、人前で言えないことを言うための場所。
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おわりに

いろいろと綴っていたこの場所を
これで終わりにすることにしました。

理由は、

彼女とおわかれすることになったからです。

まだお互いに気持ちはありつつも

生活感や価値観の違いから、
ふたりで話し合った末に別れることにしました。

人との出会いというものは、
人を好きになるという気持ちって不思議なものです

ずっと一緒にいようと
お互いに想っていたのに

いつの間にかお互いに無理をしていて

大好きだから、
一緒にいると、お互いにツライから
お互いの個々を尊重したいから

別れたほうがいい

そういう結論になったんだなと

いまは思います。

セクシャリティとか、LGBTだからとか
そういうことは関係なく

ストレートの夫婦でもカップルでも
同じことなんだろうなと
思います

私たちが幸いだったのは
いわゆる婚姻関係にないことと
一緒に家を借りて(購入して)なかったこと
なのかもしれません

きっとしばらくしたら
友だちとして会ったりすることもあるでしょう

ただいまはとにかくやっぱり

もうしばらく
恋はしたくないかなと

槇原敬之の歌詞みたいなことを思うのです

ひとりでいるほうが、
おひとりさまでいるほうが

ひとりでいれば
ひとりのぶんなので
傷つく度合いも少ないのかなと

まだいまは、そんなネガティヴなことを思います

ただ少なくとも
楽しかった記憶だけを残していたいものです

そして心から
彼女には幸せになってほしいなと思います

もうこれからはひとりでいると
いくら言っていたとしても
未来は誰にも分からないものだから


わたしが側にいなくても

あなたの側に誰がいようとも

あなたが幸せでいられますように



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足湯

わたしたちにとって

初めての一泊旅行のその日は、
あいにく天気予報は雨の日で。

曇り空の下、
いつもより早起きをして、彼女と駅に向かった。
ボストンバックにふたりぶんの荷物をつめて。

彼女はいつも、荷物を持ってくれる。
買い物をしたときも、わたしが重たい仕事のバックを
抱えているときも。
何も言わずに、わたしの手からバックを奪いとる。

その度にわたしはうれしくなって、
ついつい彼女に抱きつきたくなる衝動をおさえる。

駅に向かって歩きながら、
「お腹すいてきちゃった」と、彼女が言う。

わたしたちはふたつずつ、おにぎりを買って、
バスに乗り込む。

そのバスの中は、男女のカップルばかりで、
わたしたちの席の後ろも、前も、横も
ななめ前も。

わたしたちはコソコソと他のカップルを観察して

「あ、となりの彼は寝ちゃったね・・横の彼女、寂しそうだね」
「ななめ前の人、酔っぱらってる・・!キスしあってるみたい」

なんて言いながら、くすくす笑い、

雨の外の景色をみて、
ふたりでおにぎりをほうばる。

「おいしいね。遠足みたいだね。」

そんなことを言いながら、またふたりで笑って、
こっそりと、座席に隠れるようにして
手をつなぐ。

そうして
バスが到着したときは、
たまたま雨があがっていて。

温泉街をふたりでのんびりと歩いて
ふたりでたくさん写真をとって
足湯につかった。

周りはどこを見ても、
家族や男女のカップルばかりだけど、

きっと周りの人は、
わたしたち女ふたりもカップルだなんて
誰も思わないんだろうな。

そんなことを思いながら、
足湯につかってひざかけをかけて、
またわたしたちは、

ひざかけの下で見えないように、

そっと手をつないだ。


足湯にて 






旅の準備

「こんどの週末、土日休みなの」


土日とも休めることがほとんどない彼女のその言葉から、
私たちにとって初めての
一泊旅行は実現した。

仕事で忙しい彼女に代わって、
私が旅行先を決めて、宿をとる。

私たちの思い描く一泊旅行は初めてだけど、
彼女に聞かなくても好みが分かる。

温泉があって、
ホテルではなく旅館で、
畳の部屋。
ふとんが好きな彼女、畳が好きなわたし。

移動は、お得なバスにしよう。
長い時間移動した後は、足湯につかろう。
夕飯が和会席だから、お昼はお肉にしよう。
私の頭の中でどんどん旅の計画ができてきて・・

「旅のしおり、つくってね」

彼女はそう、笑いながら言う。
そうして言われたとおり私は、
手書きの「旅のしおり」をしたためる。

移動の時間と、場所場所で注意すること
旅館の住所と連絡先。

ついつい、旅館のイラストの近くに、
ハートをいっぱい並べてそえる。
自分で描いていて、恥ずかしい。
大のオトナがね、と思う。

彼女にそれを見せると、
顔をくしゃくしゃに笑いながら、
うんうん、と言いながらながめ、

「これは間違っても、落とさないようにしないとね」

と、ふたりで笑いあう。

なんでもないただの一泊旅行が
わたしたちにとっては大きなイベントで。

旅の前日、
彼女は寄り道することなく、
まっすぐわたしの家に帰ってきて、
わあわあ言いながら荷物をつめて、
いつもより早めに、ベッドに横になった。

心なしかふたりとも
遠足前の子どもみたいに顔がゆるんで、

そうして抱き合いながら
眠りに落ちた。




バスに乗る

ひさびさに彼女が自分の家に帰る日。
わたしも休みだったから彼女についていくことにした。

家を出たときには日が暮れていて
外は少し肌寒い。

ふたりで並んで駅に向かって歩くと、
途中に急な上り坂がある。

私が、ひぃふぅと
少し息を切らしながら坂を上る姿を見て、
彼女はクスクスと笑う。

そうして電車に乗ると、席がひとつだけあいていて、
彼女はいつもそうなのだけど、
きまって私を座らせる。

つり革を持って、私の目の前に立った彼女は

「年上優先だからね」

と、なんだか得意げに、楽しいおもちゃでも見るように
くすくすと笑いながら小声で言う。

途中の駅でたくさん人がおりて、
彼女が私の左側に座る。

しばらくすると、隣に座った彼女はウトウトしはじめ、
私の肩にコテンと、頭をあずけた。

ついつい笑ってしまいそうのなるけども
周りの目が気になる私は、
顔がゆるむのをこらえ
何ともない顔で座りつづける。

駅に到着して、そっと肩動かすと、
彼女はキリっとした顔で立ち上がり、
私の前を歩いて電車を降りた。

ホームのエスカレーターを降りる時、
みんな、前の人と階段をひとつあけて
後ろに並ぶのに

私はついつい、彼女のすぐ後ろに
ぴったりくっついて乗ってしまう。

「(距離が)近いよっ」

そう、笑いながら彼女に小声で注意される。

駅を降りて、バス停に向かって歩く。
暗い道をふたりで歩いているとついつい腕を組みたくなるけども、
ここは彼女の家の近くで、知り合いがいるかもしれないから

ガマンガマン。

そうして、ふたりでバスに乗り、
2人シートに席をおろす。
私は右で、彼女が左。

バスに乗るとすぐ、わたしはストールを外して
ひざかけにして、
彼女とわたしのひざにかける。

ストールの下で私たちは手をつなぐ。

誰からも見えないように。
ひっそり ぎゅっと 手をつなぐ。

そうしてしばらくすると、
彼女はまたウトウトして、私の左肩に
頭をコテンとあずける。

バスの中はあたたかくて、
私たちのストールの下はもっとあたたかくて。

そんな風に
バスに乗っている時間が
私はだいすき。






わたしたちの共同生活(仮)

今年の春から、彼女は私の部屋で暮らすことになった。

たまたま、
彼女の仕事先が私の家に近くなったのが、コトのはじまり。


「仕事先が変わったら、毎日、あなたの家に帰るね。」


ずいぶん前から、彼女はそう言っていたのだけれど、
私は本当にそうなるとは思っていなかった。

彼女には、
自分の家の近所に いきつけのお店があって、
よく通うビストロやお寿司屋さんがあって、
そこの店員さんやお客さんとも仲良しで。


きっとすぐ、
自分の家に帰りたくなるのでしょう、と

私はあえて、彼女の言葉にあまり期待しないようにした。

***

でも、そうして春が来ると、

彼女は本当に毎日、
私の部屋に帰ってくるようになった。

月に一度だけ自分の家に帰り、
郵便物や支払いの処理をすませ、
季節変わりの時には衣替えの衣装を持って、

すぐにわたしの家に戻ってきてくれる。


そうしてまた、私の小さい部屋で、
ふたりで一緒に過ごす。


寝室も、個室も、ダイニングもない、
小さなワンルームマンション。
私たちの共同生活みたいなもの は
自然に 流れるように 
そしていつの間にか、はじまっていた。


毎晩、眠りにつくときは

小さなシングルベッドで、
おやすみ、と言いながら

彼女は私に腕まくらをして、私の顔をぎゅっとひきよせる。

私も彼女の首筋に顔をつけて、
唇をおしあてる。

そうしてそのまま眠りにつくと、

気づけばいつの間にか
ふたりともあおむけになってて、
彼女の足が私の上にのっかって、
私の腕が彼女のお腹にのっかっていたりする。

そして毎朝、彼女を起こすのは私の役目。

いつものようにちょっかいをだして、
彼女のほっぺをつまんだり、
おでことおでこをくっつけたり、
ぺちぺち叩いたり。

そうするうちに彼女は目が覚めて、

また私に腕まくらをして、私の顔をぎゅっとひきよせる。
私も彼女の首筋に顔をよせて、

そうして唇を重ねる。

「おはよう」



私がテレビをつけるために
寝返りをうつと、

彼女は後ろから私をぎゅっと抱き寄せて、
ほっぺとほっぺをくっつける。

お互いの体温と、お互いの肌を感じたくて、
そうしてギリギリの時間まで、
彼女と私は、小さいベッドの上で布団にくるまって
朝のテレビをぼんやりと流しながら
体をよせ合う。

そんな朝がつづいて、
私たちの仮住まいのような共同生活は、
気がつけばいつの間にか、1年半近くも過ぎていた。